職場に虚言癖のような言動をする人がいて、業務報告や実績説明を何度も変えられると、「もう解雇できないのか」と考えたくなる場面はありますよね。特に、人事担当者や上司の立場だと、周囲の負担、取引先への影響、チームの不公平感まで背負うことになります。
ただ、職場の虚言癖と解雇の問題は、感情だけで動くとかなり危険です。嘘をついたことが事実でも、嘘の内容、頻度、業務への影響、会社側の注意指導、本人に弁明の機会を与えたかによって判断が変わります。この記事では、虚言癖のある社員を責めるためではなく、会社側も本人側もトラブルを広げないために、解雇前に整理すべきポイントを現実的にまとめます。
- 虚言癖だけを理由に即解雇する危険性がわかる
- 虚偽報告を証拠化するときの見方がわかる
- 注意指導から懲戒までの段階的な流れがわかる
- 不当解雇リスクを避ける確認点がわかる
職場の虚言癖と解雇の判断

嘘だけで即解雇は危険
職場の虚言癖で最初に押さえたいのは、「嘘をついたからすぐ解雇」とは考えないことです。会社として困っているのはよく分かりますが、解雇は労働契約を一方的に終わらせる重い判断です。厚生労働省も、解雇はいつでも自由にできるものではなく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要だと説明しています。詳しくは厚生労働省の労働契約の終了に関するルールも確認しておくとよいです。
つまり、人事や上司が「虚言癖だから」「信用できないから」と感じているだけでは足りません。どの発言が虚偽だったのか、その発言が業務にどんな支障を出したのか、会社はどのように注意し、本人はどう説明したのかまで、後から第三者に説明できる形にしておく必要があります。ここが曖昧なまま解雇に進むと、本人から不当解雇だと主張されたときに、会社側がかなり苦しくなります。
たとえば「昨日の報告が嘘だった」「ミスを隠した」という単発の出来事と、「顧客への虚偽説明を繰り返して損害を出した」「勤怠や経費を偽って会社のお金に影響した」という出来事では重さが違います。前者は注意指導や再発防止で済むこともありますし、後者は懲戒処分を検討する余地が出ます。大事なのは、ラベルではなく具体的な行為を見ることですね。
また、本人が本当に虚言癖なのか、単なる言い訳なのか、記憶違いなのか、業務量の多さから報告が崩れているのかも分けて見る必要があります。もちろん、嘘で周囲が傷ついているなら放置してよいわけではありません。ただし、解雇を考える段階では「腹が立つ」よりも「会社として説明できるか」を優先する方が、結果的に職場を守りやすくなります。
虚偽報告の事実を分ける
虚言癖のある社員への対応では、まず虚偽報告の中身を分けることが重要です。同じ「嘘」でも、雑談で話を盛っただけなのか、業務進捗を偽ったのか、顧客対応の内容を隠したのか、勤怠や経費を不正に申告したのかで、会社が取れる対応は変わります。職場で問題になるのは、性格上の嘘そのものではなく、会社の業務秩序や信頼関係に具体的な悪影響が出ている嘘です。
記録するときは、「この人はいつも嘘をつく」とまとめず、日時、場面、発言内容、実際の事実、確認方法、業務への影響を分けます。たとえば「6月3日、A社への提出完了とチャットで報告。しかし実際には未提出で、A社から督促あり。本人に確認したところ、提出予定だったと説明」という形です。この粒度なら、本人への確認もしやすく、後から見ても何が問題だったのか分かります。
| 整理項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 日時と場面 | いつ、誰に、どの業務で言ったのか |
| 発言内容 | 報告、申告、説明、隠ぺいのどれか |
| 客観資料 | メール、チャット、勤怠、顧客記録など |
| 業務影響 | 遅延、損害、信用低下、チーム負担など |
この整理は、相手を追い詰めるためではありません。むしろ、感情的な決めつけを避けるための作業です。虚言癖という言葉を使うと、どうしても「その人の性格が悪い」という話に寄りやすくなります。しかし、職場の人事対応では、性格評価よりも行為評価が大切です。行為として説明できれば、注意指導、配置転換、懲戒処分などの選択肢も冷静に検討できます。
既存の職場トラブルとしての向き合い方は、職場に虚言癖のある人がいるときの付き合い方でも整理しています。この記事ではさらに踏み込んで、人事判断や解雇前の確認に絞って考えます。まずは「何に困っているのか」を業務上の言葉に置き換えるところから始めてください。
業務影響と損害を見る
職場の虚言癖を解雇や懲戒の問題として考えるなら、嘘の回数だけでなく、業務影響と損害の大きさを見る必要があります。小さな見栄や雑談の誇張が多い人でも、業務には支障が出ていない場合があります。一方で、たった一度でも、取引先に重大な虚偽説明をした、事故やクレームを隠した、会社の金銭に関わる申告を偽ったという場合は、重く評価される可能性があります。
見るべきポイントは、「会社がその人を信頼して任せていた業務」と「嘘によって崩れたもの」です。営業なら顧客との約束、経理なら数字の正確性、管理職なら部下への指示や報告、現場職なら安全確認など、職種によって重要な信頼の中身が違います。単に上司が腹を立てたという話ではなく、職務上求められる信頼がどこまで失われたかを具体化することが大切です。

虚偽報告の重大性は、嘘の印象ではなく、遅延・損害・安全・顧客信用・チーム負担のような実害で整理すると判断しやすくなります。
また、会社側の管理体制も見られます。たとえば、勤怠の不正申告があったとしても、チェック体制が長く機能していなかった、曖昧な運用を黙認していた、過去にも同じことがあったのに注意していなかった、という事情があると、いきなり重い処分に進むのは難しくなります。本人の行為が悪いとしても、会社の運用にも問題があったなら、まずルール整備や注意指導から始める方が現実的です。
この段階では、解雇ありきで資料を集めるよりも、「注意で改善できるのか」「業務変更で再発を防げるのか」「懲戒処分が必要なほど重大なのか」を分けて考えます。職場の虚言癖は周囲のストレスが強いので、早く結論を出したくなりますが、急ぐほど判断が雑になります。記録、影響、会社側の対応履歴を見比べることで、処分の重さを決める土台ができます。
就業規則との関係を見る
懲戒処分や懲戒解雇を検討するなら、就業規則の確認は避けられません。会社が懲戒できる場面は、通常、就業規則に懲戒事由として定められている必要があります。虚言癖という言葉が規則に書かれていなくても、虚偽報告、経歴詐称、勤怠不正、会社の信用を傷つける行為、業務命令違反、職場秩序を乱す行為などに該当するかを確認します。
ただし、就業規則にそれらしい文言があるだけで十分とは言えません。本人の行為がその条項に本当に当てはまるのか、処分の重さが行為に見合っているのか、過去の社内処分と比べて不公平ではないかも見られます。同じような虚偽報告をした人には注意だけだったのに、今回だけいきなり懲戒解雇にするとなると、合理性を説明しにくくなります。
- 就業規則に懲戒事由が明記されているか
- 虚偽報告の内容がどの条項に当たるか
- 過去の処分例と比べて重すぎないか
- 本人に規則や注意内容が伝わっていたか
普通解雇と懲戒解雇の違いも押さえておきたいところです。普通解雇は、能力不足、適格性の欠如、信頼関係の破壊などを理由に雇用契約を終わらせる判断です。懲戒解雇は、企業秩序違反への制裁として最も重い処分です。どちらも軽い判断ではありませんが、懲戒解雇は特に本人への不利益が大きいため、より慎重な確認が必要になります。
人事担当者が迷う場合は、最初から「解雇できるか」だけを問うのではなく、「注意指導で足りるか」「戒告や減給など段階的な懲戒で足りるか」「普通解雇と懲戒解雇のどちらの整理なのか」を分けて検討するとよいです。職場の虚言癖に悩むと、どうしても相手を排除する方向に考えがちですが、会社側の説明責任を考えるなら、手順を飛ばさないことがいちばんの防御になります。
医療や特性の決めつけ禁止
職場で嘘が続くと、「この人は病気なのでは」「発達特性があるのでは」「人格の問題では」と考えたくなることがあります。ですが、人事対応の場面で、会社が本人を診断するような言い方をするのは避けた方がよいです。虚言癖という言葉自体も、日常語として使われることが多く、医学的な診断名のように扱うと誤解を生みます。
会社が見るべきなのは、本人の内面を断定することではなく、業務上の行為と影響です。「あなたは虚言癖だから解雇する」という伝え方は危険ですし、本人を必要以上に傷つけます。伝えるなら、「この報告が事実と異なっていた」「その結果、業務にこの影響が出た」「以前も同種の注意をしたが改善が見られない」というように、確認可能な事実に絞るべきです。
病気・障害・性格を会社が断定するのではなく、業務報告の不一致、勤怠不正、顧客対応への影響など、職場で確認できる事実だけを扱いましょう。
もし本人が体調不良や精神的な不調を訴えている場合は、さらに慎重になります。嘘だと決めつけるのではなく、産業医、主治医の意見、休職制度、業務負荷の調整など、会社の制度に沿って確認します。もちろん、体調不良の訴えがあれば虚偽報告がすべて許されるわけではありません。ただ、処分の前に事情を確認したかどうかは、後から大きな意味を持ちます。
虚言癖のある部下への日常的な向き合い方は、虚言癖のある部下に上司として向き合う方法でも整理しています。解雇を考える前の段階では、相手を治そうとするより、業務上のルール、確認頻度、報告方法を変える方が現実的です。人事判断では、決めつけないことと放置しないことの両方が必要ですね。
職場の虚言癖で解雇前にすること

注意指導を段階的に残す
職場の虚言癖で解雇を考える前に、まず残しておきたいのが注意指導の履歴です。嘘や虚偽報告があったとしても、会社が一度も正式に注意していない、改善の機会を与えていない、何を直すべきか伝えていない状態では、いきなり解雇に進む説明が難しくなります。特に、長く雇用してきた社員ほど、段階を踏んだ対応が重要になります。
注意指導では、抽象的に「嘘をつくな」と言うより、具体的な行動に落とし込みます。「進捗が未完了のときは完了と報告しない」「顧客連絡をしたかどうかはチャットで残す」「期限に間に合わない場合は前日17時までに相談する」というように、次に何をすればよいか分かる内容にします。これなら本人も改善しやすく、会社側も再発時に確認しやすくなります。
発言と客観資料のズレを整理し、本人に確認する
問題行為と改善してほしい行動を具体的に伝える
同種の問題が続く場合は注意書や面談記録を残す
改善状況、業務影響、就業規則を見て判断する
段階的な指導は、会社を守るためだけではありません。本人にとっても、何が問題視されているのかを知る機会になります。虚言癖のような言動がある人は、その場しのぎで嘘をついてしまい、後から大きな問題になることがあります。だからこそ、早い段階で「この報告の仕方は業務上困る」と明確に伝えることが、結果的に重い処分を避けることにもつながります。
注意指導の記録には、感情的な表現を書かない方がよいです。「反省がない」「人として信用できない」ではなく、「提出完了との報告があったが、実際には未提出だった」「再発防止として報告方法を変更した」といった事実中心の書き方にします。後から読み返したときに、誰が見ても状況が分かる記録を残すことが、解雇前の一番基本的な準備です。
面談では弁明を聞く
解雇や懲戒処分を検討する段階では、本人の弁明を聞くことが大切です。会社側から見ると明らかな嘘に見えても、本人には別の説明があるかもしれません。勘違い、情報共有の不足、上司の指示の曖昧さ、業務量の過多、体調不良など、虚偽報告の背景に会社側の改善点が隠れていることもあります。もちろん、弁明を聞いた結果、説明が不合理だと判断することもあります。それでも、聞く手順を踏んだかどうかは大きいです。
面談では、最初から「あなたは嘘をついた」と決めつけるより、「この報告とこの資料に違いがあります。どういう経緯でしたか」と確認する方がよいです。相手が感情的になったとしても、こちらは事実確認に戻します。人事担当者、直属上司、必要に応じてもう一人の同席者を置き、面談記録を残します。録音をする場合は、社内ルールや運用に沿って慎重に扱ってください。
- 本人の説明を最後まで聞く
- 質問は日時・資料・業務影響に絞る
- 人格評価や診断めいた言葉を避ける
- 面談後に記録を作成し共有範囲を絞る
弁明を聞くときに注意したいのは、面談を追及の場にしないことです。職場の虚言癖に疲れていると、どうしても「なぜそんな嘘をついたのか」と責めたくなります。しかし、原因を問い詰めるほど本人がさらに言い逃れを重ねることもあります。目的は反省文を書かせることではなく、事実関係と再発可能性を確認することです。質問は短く、答えを記録し、必要なら資料で照合する。これくらい淡々と進める方がよいです。
面談後は、本人の説明を踏まえて、処分するのか、再指導にするのか、配置や業務フローを変えるのかを検討します。本人が事実を認め、改善策も具体的なら、重い処分よりも再発防止策を優先できるかもしれません。逆に、説明が二転三転し、重要な業務影響があり、過去の注意後も改善していないなら、懲戒や解雇の検討に進む理由が強まります。
配置転換や改善機会を検討
虚言癖のような言動が職場で続く場合でも、解雇の前に配置転換や業務変更で改善できないかを考える場面があります。すべてのケースで配置転換が必要という意味ではありませんが、本人の嘘が特定の業務プレッシャーや役割不一致から出ているなら、業務設計を変えることで再発を減らせる可能性があります。
たとえば、本人が顧客への単独説明で話を盛ってしまうなら、しばらく同席制にする。進捗報告で嘘が出るなら、日次の短いチェックに変える。数字を扱う業務で不正確な説明が続くなら、ダブルチェックを入れる。こうした対策を試しても改善しないのか、それとも会社が何も試さずに解雇へ進んだのかでは、判断の印象が大きく違います。
| 対応案 | 向いているケース |
|---|---|
| 報告方法の変更 | 進捗や完了報告に嘘が出る場合 |
| 同席・承認制 | 顧客説明や社外連絡で話を盛る場合 |
| 担当業務の見直し | 数字・契約・安全など重要業務で不安がある場合 |
| 改善計画 | 本人が改善意思を示している場合 |
改善機会を与えるときは、期間と基準を曖昧にしないことが大切です。「しばらく様子を見る」だけでは、本人も上司も何を達成すればよいのか分かりません。「今後1か月、顧客連絡はすべてCRMに記録する」「週次面談で未完了タスクを確認する」「虚偽報告が再発した場合は懲戒処分を検討する」といった形で、期間、行動、再発時の扱いを明確にします。
採用時や面接時の嘘が問題になっている場合は、入社後の勤務態度だけでなく、採用判断にどの程度影響したかも見ます。採用段階での確認の仕方は、面接で嘘を見抜く質問例とリファレンス確認も参考になります。入社後に経歴詐称が分かったからといって常に解雇できるわけではないため、職務との関係性、重大性、会社の確認範囲を整理しましょう。
解雇予告と書面を確認
どうしても解雇を検討する段階に進む場合は、解雇理由だけでなく手続面も確認します。一般に、解雇には30日前の予告または解雇予告手当が関係しますし、本人から求められれば解雇理由証明書の問題も出てきます。個別事情によって扱いが変わるため、ここは社労士や弁護士など専門家に確認した方がよい領域です。
特に注意したいのは、懲戒解雇なら何でも即日でよいと考えないことです。重大な背信行為や会社に大きな損害を与えたケースでは重い対応を検討する余地がありますが、解雇予告の除外や即時解雇には別の要件や手続が絡みます。人事担当者だけで判断して突き進むと、後から手続違反や不当解雇の争いになりやすいです。
懲戒解雇、即日解雇、経費・勤怠不正、顧客損害、休職や体調不良が絡むケースでは、社内判断だけで進めず専門家に確認する方が安全です。
解雇理由を伝える文書も、表現に気をつけます。「虚言癖のため」ではなく、「何月何日の業務報告が事実と異なり、取引先対応に遅延を生じさせた」「同種の注意指導後も再発した」「就業規則の該当条項に基づく」というように、具体的な行為と根拠に寄せます。感情的な言葉や人格否定は、本文にも面談記録にも残さない方がよいです。
また、退職勧奨と解雇を混同しないことも大事です。会社が退職を勧める場面でも、本人の自由意思が必要です。長時間の面談、強い言葉、選択肢がないような伝え方は、後から問題になります。職場の虚言癖で周囲が疲れていても、会社側が強引な手順を取れば、論点が本人の虚偽報告から会社の不適切対応に移ってしまいます。最後の局面ほど、静かに、書面で、専門家確認を挟んで進めるのが現実的です。
職場の虚言癖と解雇のまとめ
職場の虚言癖は、放置するとチームの信頼を壊し、真面目に働いている人の負担を増やします。だから、人事や上司が「何とかしなければ」と感じるのは自然です。ただし、解雇という結論に進むには、虚言癖というラベルではなく、虚偽報告の具体的事実、業務影響、注意指導、本人確認、就業規則との関係を積み上げる必要があります。
まずは、嘘の種類を分けます。雑談の誇張なのか、業務報告の虚偽なのか、勤怠や金銭に関わる不正なのか。次に、証拠を整理します。メール、チャット、勤怠記録、顧客対応履歴、面談記録などです。そのうえで、口頭注意、書面注意、業務フローの変更、配置転換、懲戒処分という順に、段階的に検討していきます。
職場の虚言癖だけで即解雇と考えるのではなく、虚偽報告の具体性、業務への影響、改善機会、手続の妥当性をそろえて判断することが大切です。
本人側に改善の余地があるなら、報告方法を変える、確認頻度を上げる、業務を見直すことで解決できる場合もあります。一方で、重大な虚偽報告が繰り返され、会社の信用や金銭、安全に影響し、注意後も改善しない場合は、懲戒や解雇を検討する段階に入ることもあります。その場合でも、最終判断の前に専門家へ相談する方が安全です。
職場の虚言癖と解雇の問題で大切なのは、相手を感情的に裁くことではありません。会社として、本人にも周囲にも説明できる手順を踏むことです。焦って排除しようとすると、職場の問題が不当解雇トラブルに変わってしまいます。まずは事実を整え、改善機会を示し、それでも難しい場合に次の判断へ進む。この順番を守ることが、職場を守るいちばん現実的な方法かなと思います。判断に迷う段階ほど、記録を見直してから進めましょう。
