虚言癖で慰謝料は請求できる?判断基準と証拠の集め方を徹底解説

パートナーや配偶者の虚言癖に長年苦しんできた。その嘘によって多大な精神的・経済的ダメージを受けた。そんな経験をした方が「慰謝料を請求できないか」と考えるのは、ごく自然なことだと思います。

しかし残念ながら、「嘘をついた」という事実だけでは慰謝料請求はできません。法的に慰謝料が認められるには、一定の条件を満たす必要があります。一方で、虚言癖が別の違法行為と結びついている場合は、十分に請求可能です。

この記事では、虚言癖で慰謝料を請求できるケースとできないケースを具体例で整理し、証拠の集め方から弁護士費用の相場まで徹底解説します。

この記事のポイント
  • 単なる嘘は慰謝料の理由にならない法的な理由
  • 慰謝料を請求できるケース・できないケースの比較
  • 証拠(録音・スクリーンショット・医療証明書)の集め方
  • 弁護士費用の相場と無料相談の活用法
目次

虚言癖で慰謝料が請求できるケースとできないケース

裁判・法律の書類イメージ

単なる嘘が慰謝料にならない法的理由

結論から言うと、「虚言癖がある」「嘘をついた」という事実だけでは、慰謝料を請求することはできません。これは法律上の根拠に基づいています。

民法上、慰謝料請求が認められるには「不法行為」(民法709条)または「債務不履行」(民法415条)に該当する必要があります。不法行為とは「故意または過失によって他人の権利・利益を侵害する行為」です。嘘をつくこと自体は、一般的に不法行為として認められていません。

では、なぜ嘘が不法行為にならないのでしょうか。それは「嘘をつかれた」という行為だけでは、具体的な権利・利益の侵害があったと立証しにくいからです。精神的苦痛を感じたとしても、それが法的に保護された利益(名誉権・プライバシー権など)の侵害と認められなければ、慰謝料の根拠になりません。

「嘘をつかれて傷ついた」という感情的な苦痛は、慰謝料の根拠としては認められにくいです。法律は感情ではなく具体的な権利・利益の侵害を問題にします。

ただし、嘘が特定の違法行為と結びついている場合は話が変わります。嘘が不貞行為(浮気)・詐欺・DVなどを隠すため、または行うために使われた場合、その違法行為に対して慰謝料を請求できます。重要なのは「嘘そのもの」ではなく、「嘘によって引き起こされた違法行為」が問題になるということです。

慰謝料請求できるケースの具体例

虚言癖が絡む関係で、慰謝料を請求できる可能性があるケースを具体的に見ていきましょう。

ケース1:浮気を嘘で隠していた場合 「浮気していない」「あの人はただの友達」などと嘘をつき続けながら不貞行為を行っていた場合、不貞行為自体が慰謝料の根拠になります。この場合、浮気の証拠(メッセージ・写真・目撃証言・探偵の調査報告書など)が必要です。

ケース2:嘘で金銭を騙し取られた場合(詐欺) 「投資に使う」「返す」などと嘘をついてお金を借りたまま返さない、または虚偽の理由でお金を受け取った場合は詐欺罪が成立する可能性があります。慰謝料と同時に詐取した金銭の返還も求めることができます。

ケース3:精神的DVが継続的に行われた場合 「そんなこと言っていない」と繰り返すガスライティングや、言葉による継続的な侮辱が心身に重大な影響(うつ病・PTSDなど)を及ぼした場合、精神的DVとして慰謝料を請求できる可能性があります。医師の診断書が重要な証拠になります。

ケース4:婚姻の動機となった嘘(詐欺婚) 「収入が多い」「離婚歴がない」「病気がない」など、婚姻の意思決定に重大な影響を与える嘘をついて結婚した場合、婚姻取消しや慰謝料請求の根拠になる可能性があります。ただし証明のハードルは高く、弁護士への相談が必要です。

慰謝料が認められるかどうかは、「嘘の内容」と「それによる被害の具体性」が鍵です。単なる嘘では難しくても、浮気・詐欺・DVが伴う場合は請求できる可能性が高まります。

慰謝料請求できないケースの具体例

一方で、虚言癖があっても慰謝料請求が難しいケースも多くあります。法的な認識と実情のギャップを理解しておくことが重要です。

請求が難しいケースとして代表的なのは次のようなものです。「自分の過去や経歴について嘘をついていた(でも犯罪ではない)」「記念日を忘れて嘘の理由を言った」「浮気していないと嘘をついたが、実際に浮気はしていなかった」「約束を守らなかった言い訳として嘘をついた」など、日常的な嘘の多くは慰謝料の根拠にはなりません。

嘘の種類慰謝料請求理由
浮気を隠す嘘不貞行為が違法行為に該当
金銭詐欺の嘘詐欺罪に該当する可能性
精神的DVの嘘(継続的)医療証明など強い証拠が必要
婚姻動機の嘘証明のハードルが高い
日常的な嘘・言い訳×具体的な権利侵害がない
過去・経歴の嘘×婚姻の決定的要素でない限り難しい

この表からわかるように、慰謝料が認められるかどうかは「嘘の背景にある違法行為」と「その証明力」に左右されます。判断に迷う場合は弁護士への無料相談を活用することをおすすめします。

離婚調停で相手が嘘をついた場合の対処法

離婚調停の場で相手が嘘をつく、または事実を隠す行為は珍しくありません。特に虚言癖のある相手との離婚では、調停の場でも嘘をつき続けるケースがあります。

まず知っておいていただきたいのは、離婚調停は法廷ではないという点です。調停は当事者双方の合意を目指す話し合いの場であり、調停委員が間に入りますが、証人尋問や証拠調べといった裁判手続きは行われません。そのため、相手が嘘をついても直接の制裁はありません。

しかし、調停の場でも証拠が効力を発揮します。相手が「暴力はなかった」と言い張っても、医療記録や録音があれば調停委員の心証が変わります。また、調停で合意が成立しない場合は離婚裁判に移行しますが、裁判では証拠が決定的な役割を果たします。

調停で相手が嘘をついていると感じたら、そのたびに事実を記録してください。「〇月〇日の調停で相手が◯◯と主張したが、実際は△△だった」という具体的な記録が、後の裁判で役立ちます。

なお、裁判手続きの中で故意に嘘の証拠を提出したり、虚偽の陳述をしたりすることは「偽証」にあたる場合があります。ただし離婚調停は厳密な意味での「証人尋問」ではないため、偽証罪の適用は限られます。一方、財産分与に関連して故意に財産を隠した場合などは法的な問題になる可能性があります。

慰謝料の相場と請求できる金額の目安

虚言癖を伴うモラハラや精神的DVで慰謝料が認められた場合、金額はどのくらいになるのでしょうか。ケースによって大きく異なりますが、一般的な相場を把握しておくことは重要です。

不貞行為(浮気)に対する慰謝料の相場は、50万円〜300万円程度です。婚姻期間・子どもの有無・浮気の期間・精神的ダメージの大きさによって変わります。長期にわたる浮気で子どもがいる場合は高額になる傾向があります。

精神的DVやモラハラに対する慰謝料は、50万円〜200万円程度が目安です。ただし、精神的DVの立証は難しく、うつ病や PTSDなどの診断書があると金額が上がりやすいです。詐欺的な金銭被害がある場合は、被害額の回収が主軸になり、慰謝料はそれに加算される形になります。

請求の種類相場金額影響する要因
不貞行為(浮気)50〜300万円婚姻期間・浮気期間・子の有無
精神的DV・モラハラ50〜200万円継続期間・診断書の有無・DVの程度
詐欺的金銭被害被害額+慰謝料被害金額・証拠の明確さ
婚姻動機の嘘(詐欺婚)50〜150万円嘘の内容・婚姻期間

証拠の集め方と弁護士への相談で慰謝料請求を成功させる

弁護士に相談する様子

録音・スクリーンショット・日記の活用法

慰謝料請求を成功させるためには、証拠が命です。「言った・言わない」の争いになりやすい虚言癖の相手との関係では、特に早期から証拠収集を始めることが重要です。

最も手軽に集められる証拠はデジタル記録です。LINEやメール・SNSのやり取りは、相手の暴言・嘘・威圧的な発言を記録した証拠になります。スクリーンショットを撮り、クラウドに保存しておきましょう。相手が「削除してほしい」と言ってきたり、突然メッセージを送ってこなくなった場合は要注意のサインです。

次に重要なのが音声録音です。暴言・脅し・金銭の要求など、会話での証拠はスマートフォンのボイスレコーダーで記録できます。自分が相手の言動を録音することは、一般的に違法ではありません(ただし、第三者の会話を無断録音する場合は注意が必要です)。録音した内容は日付・場所・状況と合わせてメモに残しておくと後で整理しやすいです。

日記は「継続的な被害」を証明するために有効です。単発の出来事より、長期にわたって繰り返されたことを示すことで、精神的DVの主張を裏付けられます。日記には「いつ・何を言われたか・自分はどう感じたか」を具体的に記録します。手書きでも電子でも構いません。

証拠はできるだけ早く集め始めましょう。「まだ離婚を考えていない」という段階でも、記録を残しておくことが後々の選択肢を広げます。相手に気づかれないよう、クラウドなど安全な場所に保管することが重要です。

医療証明書が慰謝料請求で果たす役割

精神的DVやモラハラによる慰謝料請求において、医療証明書は最も強力な証拠の一つです。「精神的に追い詰められた」という主張を、客観的な事実として裏付けてくれます。

精神的DVによってうつ病・適応障害・PTSDなどを発症した場合、心療内科や精神科での診断書を取得することが重要です。診断書には「発症時期」「症状」「原因(ストレス要因)」が記載されます。医師に「配偶者からの精神的暴力が原因です」と明示してもらえると、証拠としての効力が高まります。

また、身体的暴力があった場合は、傷の写真と合わせて整形外科・内科の診断書も証拠になります。暴力を受けた直後に医療機関を受診し、「暴力によるものです」と申告することが重要です。後日医療機関を受診して「過去の暴力によるものです」と申告しても、診断書の証拠価値は下がります。

精神科・心療内科への受診をためらう方もいますが、医療記録は慰謝料請求において非常に重要です。「記録を残すための受診」という意味でも、早めに相談することをおすすめします。

なお、医療機関では「DV被害者であること」を申告すると、配偶者暴力相談支援センターへの紹介や、関連する支援制度の情報提供を受けられることがあります。医療機関が連携先として機能する場合もあるため、積極的に相談してみてください。

弁護士への相談タイミングと注意点

「弁護士に相談するのはもっと状況が悪化してからでいい」と考える方が多いですが、それは誤解です。弁護士への相談は、できるだけ早い段階で行うことを強くおすすめします。

早めの相談が重要な理由は複数あります。まず、慰謝料請求には時効があります(不法行為から3年、または被害を知った時から3年)。早めに相談することで、請求権が消滅する前に行動できます。次に、弁護士から「今集めておくべき証拠」のアドバイスをもらえます。後から証拠を集めようとしても、相手が隠したり破棄したりしている可能性があります。

また、精神的に追い詰められている状況では、自分で合理的な判断をすることが難しくなっています。弁護士が客観的に状況を整理し、最善の選択肢を提示してくれることで、冷静に次のステップを踏める場合も多いです。

弁護士相談時の注意点

相談前に「いつ・何が起きたか」を時系列でまとめたメモと、証拠のリストを用意すると相談が効率的になります。弁護士を選ぶ際は、離婚・家事事件の実績がある事務所を選びましょう。複数の事務所に相談して比較することも大切です。

弁護士費用の相場と無料相談の活用法

「弁護士に頼むと費用が高い」というイメージから、相談をためらう方も多いです。しかし実際の費用は、事件の内容や依頼範囲によって大きく異なります。

離婚・慰謝料請求に関する弁護士費用の主な種類は次の通りです。相談料(30分5,000円程度・初回無料の事務所も多い)、着手金(20万円〜50万円程度)、成功報酬(獲得額の10〜20%程度)、実費(裁判所費用・郵送費など)があります。合計すると50万円〜100万円程度になるケースが多いですが、慰謝料が認められれば相殺できる場合もあります。

費用負担を軽減する方法として、法テラス(日本司法支援センター)の活用があります。法テラスでは、収入が一定以下の方に弁護士費用の立替制度があり、分割返済が可能です。また、一部の弁護士事務所では「成功報酬型」を採用しており、慰謝料を獲得した場合にのみ費用が発生するため、初期費用を抑えられます。

費用の種類相場備考
相談料無料〜5,000円/30分初回無料の事務所多い
着手金20〜50万円事件の複雑さによる
成功報酬獲得額の10〜20%成功報酬型もある
法テラス立替制度(分割返済可)収入条件あり

虚言癖についての詳しい情報は、厚生労働省のこころの健康情報の公式情報も参考にしてください。

まとめ:虚言癖慰謝料請求の判断基準と行動ステップ

虚言癖と慰謝料請求の関係を整理すると、「嘘そのものではなく、嘘が絡む違法行為(浮気・詐欺・DV)に対して請求できる」というのが基本的な考え方です。感情的な被害だけで慰謝料を請求することは難しいですが、具体的な違法行為と証拠があれば、正当な権利として主張できます。

今まさに苦しんでいる方へ、まず取るべきアクションをまとめます。

  • 今日から証拠を集め始める(LINE・録音・日記)
  • 心身に影響が出ているなら心療内科に相談する
  • 無料の法律相談(法テラス・弁護士の初回無料相談)を活用する
  • DV相談窓口(よりそいホットライン: 0120-279-338)に電話する

虚言癖を持つパートナーとの関係から法的に身を守ることは、あなたの正当な権利です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、少しずつ前に進んでください。

「慰謝料が取れるかどうか」よりも、まずは「安全に状況から抜け出すこと」を最優先にしてください。法的な手続きは、安全が確保された後でも進められます。

目次