双極性障害と虚言癖の違いと誇大な話への家族の対応

家族が「大きな仕事が必ず成功する」「すぐにお金を返せる」と話す一方で、約束や説明が現実と合わない。双極性障害と虚言癖に関係があるのか、どう対応すればよいのか迷う場面があります。

双極性障害と虚言癖は同じものではありません。診断名だけで、その人が嘘をついているのか、本人がどう認識しているのか、悪意があるのかを判断することはできません。誇大な発言に睡眠や活動の変化が重なるなら、真偽の追及だけでなく医療者への相談を考える必要があります。

この記事では、家族が確認できる変化、送金や契約を保留する伝え方、相談に使う記録の作り方を整理します。未診断の場合も、この記事の項目で病名を自己判定せず、起きている困りごとを相談材料にしてください。

先に決めたい対応

発言の真偽、体調の変化、金銭の判断を分けます。確認できない約束に合わせてお金を動かす必要はありません。睡眠や活動が普段と変わり、生活への支障が出ているなら、かかりつけの医療機関へ早めに連絡しましょう。

目次

双極性障害と虚言癖を分けて考える

睡眠や生活の変化をノートに記録する人の手元
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誇大な話だけで病名や意図を決めない

双極性障害では、躁状態・軽躁状態やうつ状態など、気分だけでなく活動や生活の状態も変わります。躁状態では、自信が過度に強くなる、睡眠が少なくても平気に感じる、話す量や活動が増えるといった変化がみられます。軽躁状態は躁状態より程度が軽く、本人には調子がよい時期に感じられることもあります。

ただし、事実と違う話や実現しない約束を、すべて症状として説明することはできません。「できると思って約束した」「見通しが変わった」「事実を隠した」「事実と違う内容を強く信じている」では、確認すべき点が違います。本人の認識や背景は、発言一つからは分かりません。

虚言癖は、日常の会話では嘘を繰り返す傾向を指す言葉です。それを双極性障害の言い換えにしたり、双極性障害のある人の誠実さを一括して評価したりしないでください。用語を整理したいときは、空想虚言症・虚言癖・妄想・作話の違いも参考になります。

双極性障害の診断は、症状の経過、生活への影響、服薬状況やほかの病気などを総合して医師が行います。国立国際医療センターの双極性障害の解説では、診断と治療の考え方を確認できます。

発言と一緒に普段からの変化を見る

大きな目標を語ることや、夜更かしが一度あったことだけで、躁状態とは判断できません。見るのは「その人の普段の状態と比べて、いつから何が変わったか」です。言葉の内容に加えて、睡眠、連絡の頻度、活動、支出などの変化を並べると、医療者へ伝えやすくなります。

スクロールできます
確認すること観察・記録する例記録だけでは決められないこと
睡眠本人が話した睡眠時間、家族が見た夜間の活動、普段との違い短い睡眠だけで躁状態かどうか
活動・会話新しい計画が急に増えた、深夜の連絡が増えた、話す量が普段より多い活動的な性格なのか病状の変化なのか
支出・約束購入や借入の話が増えた、契約を急ぐ、支払う予定額や相手意図的にだましているかどうか
気分・生活の支障いら立ち、落ち込み、欠勤、家計や人間関係への影響原因や必要な治療

たとえば「自分には才能がある」という発言と、ここ数日の睡眠の短さや急な買い物の増加が重なっているなら、その組み合わせを伝えます。家族が実際に眠っているところを見ていない場合は、睡眠時間を確定せず、「本人は2時間と話した」「午前3時に起きていたのは確認した」と分けて書きます。

厚生労働省の家族・友人向けの解説も、本人の普段の状態からの変化に注意するよう説明しています。落ち込む様子と活動の増加が重なる場合もあるため、「元気そうだから問題ない」と判断しないことが大切です。

治療と約束の確認は別に進める

双極性障害の治療は、気分や活動の症状を整え、安定した生活を支えることを目指します。一方、治療を受けたら嘘が必ずなくなる、薬を飲めば約束がすべて守られる、とはいえません。治療と並行して、重要な約束は書面や実際の進み具合で確認する必要があります。

「調子がよくなったから薬をやめたい」「言動が心配だから薬を増やしたい」と思っても、本人や家族の判断で中止・増減しないでください。副作用や飲み忘れが気になるときも、その状況を主治医や薬剤師へ伝えて相談します。米国国立精神衛生研究所(NIMH)の薬に関する解説でも、処方薬を医療者に相談せず中止しないよう案内しています。

症状が落ち着いた後にも、守れなかった約束や金銭の問題が残ることがあります。「病気があるから家族がすべて引き受ける」とせず、未解決のことを整理し、必要な相談先へつないでいきましょう。

双極性障害と虚言癖に迷う家族の対応

契約書を前に署名を保留して内容を確認する手元
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金銭・契約は確認が済むまで保留する

「絶対にもうかる」「今すぐ振り込めば間に合う」など、根拠の確認前に決断を急がれる場合は、その場で送金・署名・保証への同意をしないと伝えてかまいません。病状かどうかの判断がつくまで、家族が自分の名義や資金を使って計画を支える必要はありません。

具体的には、相手、金額、目的、期限、書面の有無を確認します。ただし「書面があるから安全」とは限りません。内容が分からない、負担できない、急がされて考える余地がないなら保留し、医療の相談とは別に契約の相談も進めます。

その場での伝え方の例

「やりたいことがあるのは分かった。でも、今日は私のお金を振り込まない。金額と契約内容を確認してから考える」「私は保証人の署名はしない。眠りや活動の変化も心配なので、病院への連絡は一緒に考えたい」

口座やカードを取り上げたり、他人のアカウントへ無断で入ったりするのではなく、まず自分ができる判断を決めます。自分名義の送金や契約への同意を止め、共有するお金の扱いは落ち着いた時期に話し合っておくと、次の場面で動きやすくなります。強い興奮や威圧があるなら、一人で説得し続けず距離を取り、相談先へ状況を伝えてください。

すでに商品・サービスの契約で困っている場合は、契約書、申込日、支払いの記録など手元にある資料を整理して、消費者ホットライン188へ相談できます。身近な消費生活相談窓口につながります。相談料は無料ですが通話料はかかります。診断名だけで契約が取り消せると判断しないでください。

発言・観察・影響を分けて記録する

記録の目的は、家族が病名を付けたり、嘘を認めさせたりすることではありません。普段からの変化と支障を、医療者が把握できる形にするためです。長い記録を完成させるまで相談を待つ必要はなく、分かる範囲の一枚のメモで構いません。

STEP
日時と本人の言葉を書く

いつ、どの場面で、何を話したかを書きます。覚えている言葉だけを記し、曖昧な部分は曖昧なまま残します。

STEP
確認できた変化を並べる

普段の睡眠・活動・支出と比べた変化、始まった時期を書きます。本人から聞いたことと家族が見たことを分けます。

STEP
生活への影響と相談事項を書く

欠勤や支払いなどの影響、家族が保留したこと、予約前に相談したい点をまとめます。安全への心配があれば先に伝えます。

記入例としては、「昨夜、本人は『今週中に起業資金を集める』と話した。午前2時にも電話をしていた。普段は日付が変わる前に就寝している。借入の金額は未確認。私の名義での借入は断り、受診日を待ってよいか病院へ相談したい」と書けます。これは説明のための例であり、診断基準ではありません。

家族の不安や怒りも相談してよいものですが、「嘘つき」「躁になった」といった評価と、観察した事実は別にします。NIMHの双極性障害の解説では、気分の変化に気づくための生活記録も紹介されています。本人と一緒に記録できる場合は、共有する範囲を話し合い、本人の説明もそのまま残しましょう。

予約を待つか迷ったら医療機関へ連絡する

生活の変化をまとめたメモを医療者に伝える相談場面
内容に合わせた説明用イメージ(生成画像)

睡眠が普段よりかなり短い状態、活動や支出の急な増加、現実とかけ離れた話に基づく行動などが重なり、仕事・家計・安全に影響している場合は、次の定期受診まで家族だけで見守ると決めず、かかりつけの医療機関へ早めに連絡してください。いつからの変化か、今困っていること、本人の受診への意向を伝えます。

本人には、「病気だからその話は嘘」と言うより、「この数日、眠る時間が短くて、予定も急に増えているのが心配。先生に今の状態を伝えてみよう」と、確認できた変化を短く話す方法があります。受診の必要性を家族が一人で判定するための会話ではなく、相談につなぐための声かけです。

本人が受診を拒むときは、医療機関へ家族から情報を伝える方法や、家族相談に対応できるかを問い合わせます。家族から情報を伝えることと、本人の診療情報を家族へ開示してもらうことは別です。対応は医療機関や本人の同意などによるため、希望どおりに診療情報を聞けるとは限りません。

かかりつけがない、家族としてどこへ相談すればよいか分からない場合は、地域の精神保健福祉センターなどの公的窓口へ相談できます。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は所在地の公的相談機関につながります。受付の曜日・時間は地域で異なるため、案内で確認してください。

自傷・自殺をほのめかす言葉は、「注目を集めるための嘘」と決めつけず、速やかに医療者へ相談してください。すでに自傷している、意識がないなど命の危険が差し迫り救急対応が必要なときは、119番で救急車を要請します。家族にも危険が及ぶ場面では、安全な場所へ離れ、一人で身体を押さえるなどの対応は避けましょう。

落ち着いた時期に確認方法を決める

症状が落ち着いて話せる時期には、「次に似た変化が出たら誰に連絡するか」「大きな買い物や借入はどのように確認するか」を本人と医療者に相談しておきます。家族が感じた変化と本人の実感が違うこともあるので、一方の説明だけにそろえる必要はありません。

  • 本人が気づきやすい変化と、家族が気づきやすい変化をそれぞれ書く
  • 相談先、連絡する目安、診療時間外の対応を確認する
  • 送金・保証・大きな買い物への同意について家族の判断を伝える
  • 家族が対応できる時間と、休む時間を確保する

謝罪があるかどうかだけで病状や反省の程度を判断しない一方、受けた負担を無かったことにする必要もありません。「この支払いが残っている」「私はこの時間帯には対応できない」と、具体的な問題として伝えます。返済や契約などの対応が必要なら、医療者だけで解決しようとせず、その問題に合う窓口へ相談してください。

双極性障害と虚言癖の混同を避けるまとめ

双極性障害の診断名だけでは、発言の真偽や意図は分かりません。誇大な話に困ったときは、重要な約束を確認すること、普段と違う睡眠・活動・支出を記録すること、必要な相談につなぐことを別々に進めましょう。

家族が今日できるのは、確認できない金銭の判断を保留し、直近の変化と困りごとを短くまとめることです。生活や安全への影響があるなら、記録の完成や次の予約を待たずに相談してください。本人の治療を支えることと、家族自身の生活を守ることは両立できます。

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